Bon Bon Boyband ! Man Man Manband !

海外Boyband/Manbandのニュースに簡単なコメントを添えたブログです。

<TAKE THAT> MV 'Windows'、鳥たちの赴く先へ

 

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Look at the birds of the air; they do not sow or reap or store away in barns, and yet your heavenly Father feeds them. Are you not much more valuable than they?

(Matthew 6:26)

 

2つ語りたいことがある。どちらを先にしようか迷うが、本ブログならではの話からしよう。

 

 

 

 

まず、このMVを観た後に思い出したのが、こちらの先行作品である。本ブログでも何回か取り上げたと記憶する。Boyband / Manband好きならぜひ押さえておきたいMVだ。

 

 

 

 

 

'In a World Like This' by Backstreet Boys  (2013/06/25 リリース)

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脱退した長兄Kevin Richardsonが再合流し完全体となったカムバック作品であることと、もう一つ、BSBが(当時ではまだ珍しかった)LGBTアライであることを宣言したMVという意味で、記念碑的だ。歌詞はまぁ、これまでのBSBと同様にふんわりアバウトな感じだけれども。

 

 

 

 

 

胸を打つのはラストシーン。壇上で抱き合う二人の男性*1、レインボーフラッグ翻るテレビ画面を観ながら、二人の女性がリビングで静かに握り合う手のクローズアップで終わる。

 

 

 

 

 

1971年生のKevinが当時42歳。BSBなりに世界を拡張する意欲的な試みのMVは、五人のメンバーが原っぱで、次々に入れ替わる家の住人たちとついぞ交わることなく幕が降りる*2。原っぱで始まり家の中で終わる、「外の世界に飛び出すために内面へ」向かった作品とも言えるだろう。

 

 

 

 

 

さて本題。本作'Windows'のMVは、この10年前のBSB先行作品に対する悲しき変奏だ。Kevinと同い年のGary Barlowは、BSBのMVをまさか観ていないだろうが、結果としてタッチが似通う、しかし全くもって好対照な作品に仕上がった。

 

 

 

 

 

改めて言うまでもないけど共通点

・イントロがギターのリフ

・リビングのテレビが物語の鍵

・原っぱと青空

・室内暗めな映像のタッチ

 

 

 

 

 

明らかに違う点は、

・メンバーが室内にこもりっきり

・翼が生えている

・モザイクのように不自然な画像処理

・なんだか気だるげ(笑)

 

 

 

 

 

最も異なる点は、クローズアップと(その逆の)ロングショットの多用だ。

それも、Gazの特徴的な目を起点にする、古くて新しい映像効果。

以下にまとめてみた。"out"がロングショット、"in"がクローズアップ。

 

ベッドルーム

→(左目out)ダイニング一人

→(右目out)ダイニング三人

→(テレビout)リビング三人(チャンネル切り替わる)

→(右目out)ダイニング三人

→(左目out)ベッドルーム

→(右目out)バスルーム

→(右目out)リビング三人合唱

→(右目out)ベッドルーム

→(ドアノブや外の映像)バスルーム

→(左目in)リビング三人

→(テレビin)リビング三人

→(右目in)ベッドルーム

→(左目in)雲の映像

→ベッドルーム

→バスルーム

→ダイニング

→リビング

→(テレビin)空に鳥三

 

すぐに分かるのは、前半がロングショットの連続、後半がクローズアップの連続ということと、Gazの左目右目が不規則に採用されていること。目の順番については、何か意味あるんでしょうかね。

 

 

 

 

 

上にも貼ったこの記事で、「ベッドから起きるか、それとも潜り込むかで逡巡している。」「全部ベッドの中の想いなんだろうな。それもGazらしい」と書いたが、まさかそのたった数日後にMVでベッドにごろりんしてるとは思わなかった。俺もだいぶGazの気持ちが分かってきたらしい。

 

 

 

 

「時間の滞留」はこのMVでも。モザイク状に不自然に切り貼りされた3人の肖像。

 

 

 

 

 

「違う時間に撮った同じ画角の映像を使ってるから時間は進んでるよ」と思うでしょ。さにあらず。

 

 

 

 

同じ場所にいて、ほぼ同じことしかしていない。せいぜい、ベッドに寝転んでいるか起き出すか、水浴びするか乾かしているか、コーヒー飲むか飲まないかの違いだ。それが、数分後でも、数日後でも、はたまた(神様的な彼らなら可能な)数万年後でも。

 

 

 

 

「時間が進んでいる」映像を切り貼りすることで「淀んだ時間」を表現している。これ、気づいた時にゾクっとした。連続したロングショットの後、クローズアップが続くと、結局元の時間に戻ってきたようにも感じるし*3

 

 

 

 

映像中の三人はもう、その淀みにウンザリしてるんだよな。Howard Donaldの美しい頬杖がそれを端的に表現している。Mark Owenはそれでも健気に朝食の支度を続けているけど、遅々として進まない。

 

 

 

 

そしてラスト。空っぽになった部屋はどれもなぜか日当たり風通しよく爽やかで、住人だった三人(三羽)の翼が大空へと羽ばたく。ここだけ動的だ。

 

 

 

 

 

カムバック後の全盛期もとうに過ぎ、TT30はもう4年前。そんな彼らのアーティスト人生を重ねることもできる。

 

 

 

 

 

内なる救いを求めて外へ。正直、Jason Orange脱退後のTT3に、こんな精神性の高いMVが作れるとは予想だにしていなかった。

 

 

 

 

 

あるいは、誰かを迎えに行くための翼なのだろうか。空の鳥をよく見れば、彼らの赴く先が分かるかもしれない。

 

guamman9bonbon.hatenablog.com

 

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*1:ここに映っている男性の人数が五人であることも象徴的だ。

*2:ただし、冒頭のゴルフバックの水色がBSBの衣装と呼び合っている。この爽やかな演出が大好きだ。

*3:蛇足だが、同じくクローズアップが印象的なMVとして、'SUPERMAN' by Nick Carter (Backstreet Boys, 2023年)を挙げる。