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<DA PUMP> DA PUMP、10年越しでその手に掴んだものとは

  結成してから20年を優に越したDA PUMP。6月に発表された「U.S.A.」が久方ぶりの彼らのヒットとなった。リリース直後から、そのCDジャケットや振り付け、歌詞などを楽しむファンの間で、「ダサカッコいい」がキーワードであるようだ。特に異論はないんだけど、果たしてそれだけだろうか。ちょっと考えた。

 俺は、この曲の勝因を、

 

「7人全員が持つべき『顔』を持ち、横一線に並んだこと」

 

にあると思っている。ほら、MVで冒頭何小節かかけてジリジリ回れ左するでしょ。アレですよ、アレ。もちろんものの例えでもあるんだけど。裏返すと、これまで大御所ISSA以外の6人には全く「顔」がなかった。少なくとも、俺は彼らを知らなかったし、目にしたとしても全く見分けられなかっただろうし、そもそも彼らの「顔」を知りたいなんてことすら、この曲を聴くまで思ったことがなかった。

 

 彼らの昔の動画を漁っていてイライラするのは、誰がどんなポジションで何をやっているのか、なかなか見えてこないことだ。一糸乱れぬ振り付けだとか、個人個人が卓越したスキルで踊っているとか、そういうのは素人の俺でも何となく分かるんだけど、それを誰がやっているのかが全然見えてこない。その結果、どんな曲出しても、どんなハイレベルなパフォーマンスをしても、ISSA "+α"な感じ。それは何故だったんだろう。

guamman9bonbon.hatenablog.com

 話逸れるけど、ここまで書いてみて急に思い出したのは、DA PUMPが2人まで減って、何人か(正確には7人)増員するというニュースを風の噂で聞いた時、正直

 

「あ、DA PUMP、もう終わったな。」

 

って感じたこと。沖縄アクターズスクール出身のアーティストが数多スターダムに乗っかって、せっかく「沖縄出身」が一大ブランドになったのに、そこでなぜ他の血を入れるんだろう、って思って。そう思ったのもほんの一瞬きりで、今年まで彼らのことを全く思い出しもしなかった。

 そして、今の今まで観る機会がなかった"Summer Rider"のMVを観ていても思う。

 

 ISSAとKEN以外、ホント、誰が誰だか全く区別つかないんだよな。

 

 凝りに凝ったMVで見事なパフォーマンスを重ねても、その1つ1つが誰のシワザなのか分かんなきゃ、アイドルファンとしては感情移入したくてもその入り口すら見つからない。おそらく彼らは、そこんとこがちょいとストイック過ぎたんじゃなかろうか。追加メンバーとしてチームに謙虚に尽くし過ぎたこと。それが、"+α"にしか見えなかった理由の1つだと感じる。

 4人でスタートした頃のあの若くて無敵な感じを、増員後に乗り越えることができなかったのは、露出の機会が激減したという事情はあれど、追加メンバーが職人に、もっと言うとボーカルISSAの「引き立て役」に徹し過ぎてしまったせいなんだろうね。ベタに「自己紹介」でもなんでもいいから、1人1人にスポットライトが当たるような何かがあれば、そしてそれが世間にもっと広まればよかったのに(そういう意味で、増員の事態が頻繁に生じるハロプロはかなり上手くやっていることも再確認できた)。個性豊かな初期メンバーのルックスが、比較的のっぺり又はシュッとした顔立ちの追加メンバーに入れ替わって、「引き立て役」化にイヤでも拍車がかかってしまう。様々な事情で新生DA PUMPとしての新曲リリースの間隔が長く空いたことも相まって、結果、結成20周年を経た古豪でも初期のイメージを覆すには至らなかった。

 

 この曲が世に出るまでは。

 

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 増員後からの彼らのMVを辿ってきた人なら分かると思うけど、これは正直驚く。歌っているISSAが中心なのは確かなんだが、踊っている一人一人の「顔」までもがじっくりはっきり浮かび上がる。「キャラ」なんてチャラ軽い言葉で済まされないほど、個人のパフォーマンスとスキルを存分に楽しむことができる。こんな楽しいMV、これまでにあっただろうか。いや、無かった。

 その楽しさ面白さに一役買っているのが、巷間噂される「イイねダンス」であると共に、俺は衣装だと思っている。オカシイでしょう、これ。だって、今まで中心、ど真ん中にいたISSAが一等地味に見えるほど、他のメンバーがクレイジー。背景が黒なもんだから、黒のパンツ穿いているISSAがビジュアル的にあまり目立たないのに比べて、他のメンバーのギラギラ蛍光色たるや。同じ黒っぽいパンツのU-YEAHにはご丁寧にもオレンジの安全ベストを着せて目立たせてる。一見おとなし目のYORIの青い衣装も、よく見ると変にダボダボで、イケてるのかイケてないのか分からない絶妙なさじ加減が見事にハマっている。他のメンバーのアホ衣装には言及するまでもない。

 ついでに歌詞、というか歌い方にも注目したい。USAの動画のコメントには、「気になって歌詞を調べてみた。」「歌番組のテロップで初めて意味がわかった。」等の意見が多数寄せられている。ISSAは現役トップ中のトップクラスの歌唱力の持ち主で、近年埋もれてきたのが惜しいほどの歌い手だと思うんだけど、その彼の歌唱が、何故か「聴き取りにくい」。はて。これ多分、ワザとこう歌っているんだよね。お題が「U.S.A.」だから、異国感、異物感を出すための彼の技術。その証拠に、意味は分からなくても「空耳」を口ずさんだり、上のコメントみたいに何となく歌詞が気になって調べたりした人は少なくないはず。俺もそうだった。で、ISSAの任務はきっと、自分の「ヘンな」歌い方でこれまで彼らに興味なかった層の耳目を引くことにある。誤解を恐れずに言うと、この曲における彼の役目は多分そこまでなんだと思う。王子のような上半身しか目立たないおとなしい衣装も、何となくそれを暗示している。そこから先のハッチャケは残りの6人に託された。

 これねぇ、おそらく「ハンデ」なんだよ。これまであまりにもスポットが当たっていなかった大層もったいない6人の為の。不動のボーカルISSAの存在感をほんのちょっぴり薄めて、そこに6人がかりで変な踊り、変な個性を大量にブチ込んでいく。そして見事そのハンデ戦をモノにしつつある彼らには、戦う「顔」が降りてきた。これまでのカッコいい曲、カッコいいMVからは予想もつかない彼らの表情。USAのMVでスポット浴びたときの笑顔とか、リリースイベントとかで見せる彼らの舞台上の仕上がった顔は、(それが誰かは絶対に書かないけど)メンバーによってはかなり「キモい」。じっくり見てあげるといい。あれが戦う「顔」だ。もちろんその「顔」はかりそめのモノに過ぎないから、一段落ついたら即座に叩き壊してもいいし、または後生大事に磨いてかぶり続けてもいい。でも、この10年間の燻りを思えば、どれほど貴重な「顔」であるかは想像するに余りある。自分は一介のパフォーマンス職人であるという大事なこだわりを一旦横に置いて、ストイックさをかなぐり捨てて、グループメンバーを超えた「顔」、もっと言うと己の欲を前面に出した個性的な「顔」が、彼ら一人一人に与えられた。それによって初めて、ISSAの真横に一直線で並ぶことができた。それも、従来に類をみないヘンテコな衣装を身に纏って。

 そんな彼らが「ダサカッコいい」。うむ。結局彼らは、加入当初から「ダサかった」。世紀末にヒットをガンガン飛ばしたのに、ピークを超えてメンバーが半減してしまったグループに、追加メンバーとして迎えられたことも。凝りに凝ったMVを作って、CMのタイアップを取ったのにもかかわらず、世間ではほとんど話題にならなかったことも。3年半リリースが空いた後に、さらに3年半、「U.S.A.」まで不条理な我慢を強いられる姿も。グループとしてやるせ無い現状に歯噛みをする姿も。ダサい上に顔すら覚えてもらえないのだから、そりゃ損なことだよな、と思う。 そしてその「ダサさ」は、このたった一曲で「ダサカッコいい」にクラスチェンジ。単にそれだけのこと。そしてたったそれだけのことが、今後どれ程大きな波紋を起こすのだろう。全く予測がつかない。

 

 今回のヒットによりタイミングが合って弾みが付けば、おそらく新曲リリースが重なることだろうと予想するし、そうあってほしいと切に願う。(下の動画にもコメントがあるが)これまでのお蔵入りも多数存在するらしい。それらのホコリをサッサカ払ったら、じっくり吟味なんかしなくていいので、どんどん世に出して貰いたい。世間はホント、飽きっぽいから。俺も浮気性だし。せっかくの「顔」が埋もれてしまう。

 が、その一方で若干不安材料も。今回みたいなイケイケアッパーアッパッパーな曲ならガンガン「ハンデ」かましていいものの、今後発表されるであろうしっとりしたバラード曲でそれが可能かどうか。彼ら7人の真価が問われるのは、これからだ。

 

*** 

 (おまけ)

 俺が見た限りほぼ唯一と言っていい、「U.S.A.」より前、彼ら7人の「顔」が見られる動画シリーズ。インタビューが深まるごとに少しずつ声が詰まっていくメンバーが多いのが印象深い。

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ISSA「初心に戻るって言ったらすごい大げさな言葉になるかもしれないですけど、でもほんと、そういう感覚を取り戻せたって言うか。ほんと、あ、そうそう、こういうこと、こういうこと、っていう。」

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YORI「4人で作ってきたDA PUMPがあるじゃないですか、もともと。そこを、やっぱり超えたい部分があって。ダンスにしても歌にしても、今の方がイイねって言われるパフォーマンスグループにしたいんですよね。僕たちが呼ばれたっていうのは、そこに意味があるというか。」

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TOMO「この先は、これを、1個の点じゃなくて、線にしていきたいと思っているんで。ここから、次のステップアップ、次のステップアップ、というのを、徐々に徐々にこう、1個1個を重ねていって。」

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KIMI「いつかこういう日が必ず来るんだろうと思って、多分みんな、メンバーもそう思ってましたし、ほんとに、この3年半、みんなは下を向いてなかったというか、常に前を向いていて。いろんな複雑な思いも多分あったと思うんですけど。みんなホント前を向いていたからこそ、この3年半の月日がやっとこうやって形になったのかなっていう気がします。」

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U-YEAH 「すごく変わったな、と思うのは、メンバーがそれぞれどうしていったらいいかを個々で考える時間を増やすんではなくて、7人が7人でできることを考えるようになったのが大きいかな、ていう感じはしますね。何事にも大切だと思うんですけど、ああしてみよう、こうしてみよう、の前に、じゃあ7人が、ことDA PUMPのことを考える。」

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KENZO「俺たちを入れた理由と、それに応えてくれるISSAさんがいて。やっぱりISSAさんを武道館のステージに立たせたいっていうのが、僕の中では1個目標ですね。個人的な目標は沢山ありますよ。ダンスをいろんな人へ普及したいだとか、自分がパフォーマーとして向上したいっていうのはあるんですけど。今、根底の、自分の心の中にある核の部分は、多分そこ(武道館)ですね。」

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DAICHI「僕たちがやってることって、日本トップクラスのエンターテイメントなんで。普通に買い物をしてきたお客さんとかが、何かライブやってる、そしたら絶対、足止めると思うんですよ。ISSAさんの歌唱力、で僕たちのパフォーマンス。やっぱ、唯一無二のグループなんで。」

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 動画を一通り見終えると、先回りして現在の彼らを知っている身としては、

「あぁ、この彼の言うことはまさに今の状況を言い当てているな。」

「ん、彼の視点は、結果としてちょっと外れてしまったな。」

「表には出てこないけど、中の雰囲気は、実はこんな感じなのかも。」

「これはまだ現実味がない話だな。」

等、(現時点での)答え合わせができて面白い。現在のDA PUMPで誰がキャスティングボートを握っているのか、もしかしたらこの7つのコメントから見えてくるかも。俺の読みでは、ISSAが頭であることは間違いないんだけど、きっとISSA以外の「この人」が首を縦に振らなければ(良い意味で)話が先に進まないんだろうな、というメンバーがいるような気がする。あくまで妄想なんだけど。

 

「U.S.A.」まで、この動画シリーズからさらに3年半。今の彼らは、同じ質問に果たして 何と答えるんだろう。